頂きをめざす息づかいが伝わってくる、凄いリアル感! -神々の山嶺-

神々の山嶺(上下巻) 集英社文庫

映画 エヴェレスト神々の山嶺(かみがみのいただき)が3月12日より公開になりました。山と溪谷2016年3月号 の特集記事をみて、興味を持っていました。

映画は来週あたりに鑑賞したいですが、その前に原作本を読みました。

 

山岳をテーマにした書籍は何冊か読んでいます。しかしフィクションの山岳小説は初めて。分厚い上下巻で大作の雰囲気が漂います。次はどんな展開になるのだろうかとワクワクしながら読み進めました。

著者の夢枕獏 氏はこの小説を執筆するにあたり、エベレストのベースキャンプに出向かれているようです。エベレストのベースキャンプって標高5000m以上でしょう。登山経験の長い人でも覚悟をもって行く場所ではないかと思います。

そのような体験もあってなのでしょう、山を登る しかも、エベレストという、死と隣りあわせの世界におかれた人間の描写が見事です。1歩進んでは呼吸を整え、また1歩進む。わずか3歩進むために何分も要する、過酷な世界が感じ取れます。

自分は登山を趣味としていることもあり、山の頂きをめざしていく記述に注力してしまうのですが、終始 物語の展開にグイグイと引き込まれていく面白さもあります。

カトマンドゥを舞台にカメラマン深町誠が手に入れた古いカメラの謎から、伝説のクライマーと称された羽生丈二との出会い、2人の間にミステリアスな物語が始まります。異なる世界で生きてきた、二人の男。人生の葛藤を振り払うかのようにエベレストに向かう…。そして限界を超えた挑戦が始まる…。

映画ではこの過酷な山での描写をどのように表現するのでしょう、原作を読んだだけにキャストへの興味もわきます。羽生丈二役を演じる阿部寛 氏の役作りが気になっています。

山と渓谷のインタビュー記事によれば、深町誠役の岡田准一 氏はプライベートで登山をされているとのこと。初めて登った山がヤビツ峠からの塔ノ岳(神奈川県丹沢山塊)とのことで(私も歩いたことがあり)親近感を感じます。

 

小説のあとがきに著者は

書き残したことはありません
(中略)
書き終わって、体内に残っているものは、もう、ない。
全部、書いた。
全部、吐き出した。
力およばずといったところも、ない。全てに力がおよんでいる。

 

うなずいてしまいました。

心が躍動するような満足感を感じた小説でした。映画も楽しみにしています。

 

小説はコミックにもなっています。アマゾンでお求めいただけます。