山登りがもっと興味深く、楽しく 〜 山の神さま・仏さま

月読尊を祀る小原木神社

山登りを始めた頃、神社や山道のお地蔵様を見かけると、時にはお賽銭と共に手を合わせて登山の無事をお願いすることはありました。しかし、当時は山を登ることに精一杯で、山の神仏に関して注目することはありませんでした。

今年の2月下旬、筑波山 (男体山と女体山からなる茨城県の山) に参拝のために登山をしました。地元の氏神様と同じ伊弉諾尊 (イザナミノミコト) が女体山に祀られているいうのがひとつの理由でした。筑波山は山全体が御神体とされ、山と信仰を意識した山行になりました。

書籍「山の神さま・仏さま」(太田 昭彦著 ヤマケイ新書) を手にしてから、山の神仏に対する知識が深まり、いつもと違った気持ちの山行をしていると感じます。

山登りは日常から解放され、心身ともにリフレッシュできます。本書において、それは山の神仏が穢れた (気が枯れた状態) を「元の気」元気にして下さるからで、「今日の山行は楽しかった!」と思えるのは、山の神仏のおかげとしています。

また、山には水や木の実、魚や動物などの食べ物がある、住居に用いる木も与えてくれる。病を癒やす薬草も穫れる。古来、人々は山の恵みを大切にし、そこにはきっと “神さまがいらっしゃるから” と山を敬うようになり、やがて山の神さまから霊力を得ようと、山中で修行をするようになった。とあります。

山をレジャーの対象として捉えていた私には思いもつかないこと。しかし、読んでみればなるほど、山と人の関わりについて理解できます。神社・寺が山と深く繋がっていることを感じます。

乾徳山山頂付近
乾徳山 (山梨県) – 険しい岩肌が修行の山を感じさせる。

現存の山について、それらにまつわる神話や宗教的事柄を取り上げ、歴史的背景や山岳信仰のことをわかりやすく説明しています。山登りをする読者ならいくつか行ったことのある山が登場することでしょう。

神奈川県に住む私にとって大山 (おおやま) -別名 雨降山- はとても身近な山です。江戸の頃には、富士山信仰と共に大山参りも盛んだったそうで、それは富士山の女神 (コノハナノサクヤビメ)と大山の男神 (オオヤマツミ) の両方をお参りしようと考えたからだそうです。
今度大山に行ったら、せめて富士見台から富士山に向かって手を合わせようと思いました。

富士見台
大山 (神奈川県) 参道 途中の富士見台

本書のサブタイトル「面白くてためになる山の神仏の話」のとおり、楽しく読み進めることができます。神さま・仏さまが気になる方には有益な一冊でしょう。

一度読み終えた後、再読しながら、Webで山や神社などの歴史を調べています。これまで行ったことのある山でも、これまで感じなかった新しい視点を持って登ることができそうです。

いきなり山頂をめざのでなく、ゆっくりと山のパワーを受け取りながら。山はますます興味深い存在になることでしょう。

※ 冒頭のアイキャッチ画像は、筑波山 (茨城県) 北斗岩 横にある月読尊を祀る小原木神社